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イタリア:なぜいままでベルルスコーニは支持されたのか
イタリア総選挙は非ベルルスコーニ勢力、中道左派勢力「連合」の勝利によって政権交代がなされそうです。とはいえ現与党は再集計を要求しており、最終結果まではいま少し時間がかかりそうですが。

このベルルスコーニといえば、「メディア支配」「汚職」などネガティブなイメージがまず思い浮かぶのですが、なぜ長期政権(第1期:1994年4~12月 第2期:2001年6月~2006年4月?)が可能だったのでしょうか。

前回2001年の伊総選挙を控えた時期、英エコノミスト誌はべ氏が脱税や汚職の疑惑を抱えた「首相不適格者」であるとして厳しく糾弾したそうです。
そのときの模様を「日本発地球メディア"World Reader"」というホームページが"イタリア国民を敵に回した?英「エコノミスト」誌 "で氏が握っている権力を含めてわかりやすく解説してくれていました。

これによれば、なんでもありの様相を呈しています。ひどいものです。「べ氏への疑惑を調査していた検事が一転して氏の弁護士に」「自身への会計虚偽申告容疑に対し、政権獲得後、会計虚偽の非犯罪化の立法を提唱」等々。

最大の疑問、こんな"汚い野郎"なのになぜ首相の地位にとどまることができたのか。イタリア国民はなぜそれを許していたのか。それについて上記ホームページではこう答えています。

  • ベルスコーニ氏は、普通のビジネスマンがやっていることをやや要領良く、かつ大規模にやっただけだ。そうしないと何も機能しないイタリーでは、仕方のないことである

  • すでにイタリーで最も高額所得者(世界でも14番目)のベルスコーニ氏は、今さら貧しい国民を欺くことはなかろう。むしろ、彼の、立身出世のノウハウを是非政治に生かして、我々もあやからせてほしい。手段がどうでも、生活がよくなればそれで構わない。これができるのは今、イタリアで彼だけである


先ほど40年間逃亡していたマフィアの大ボスがシチリアで捕まったとのニュース"'Top Mafia boss' caught in Italy"が入っていましたが、べ氏敗北となにか連動したものなのでしょうか。

そういえば先日(4月8日)の毎日新聞にイタリアについての興味深い記事が載っていました。題して"イタリア・表層と実像の落差 ユーロ後、露呈する困難"
普段われわれが抱いているポジティブな面だけの国ではないことがわかります。全文を引用して載せておきます。

グローバル・アイ:イタリア・表層と実像の落差 ユーロ後、露呈する困難=西川恵

 イタリアとまだ共産主義だったころのソ連を比べた小話がある。「ソ連はすべて隠すが、何が起こっているか分かる。イタリアは開けっぴろげだが、何も分からない」。両国を旅した英国作家の感想だが、この小話は真実を突いている。

 共産主義時代、ソ連は内情を外国人の目から隠すことに一生懸命だった。しかし何が起きているか大体のことは外部の人間に推測できた。イタリアは何も隠しだてしてないのに、その実像を把握するのは難しい。ローマ特派員時代、「イタリアが分かった」と私が実感したのは2年ほどたった時で、勤務した幾つかの国の中で最も時間を要した。

 何がイタリアを分かりにくくしているかというと、表の顔とその下にある実像の乖離(かいり)である。表の顔は日本でも知られる通り、個性豊かな地方、生活を楽しむ術(すべ)を心得た人々、パスタ、オリーブオイルなど健康的でおいしいイタリア料理、ファッション、サッカー等々。この表の顔があまりに魅力的なゆえに、実像を見えにくくしている。

 実像の一つにいまだに引きずる左翼運動がある。日本では全共闘や赤軍はすでに過去のものだが、イタリアではこの問題に決着がついていない。当時の極左、極右組織のメンバー数百人がいまなお国外に亡命中だ(昨年、日本でも公開された伊ジョルダーナ監督の6時間の長編映画「輝ける青春」は左翼運動を含めこの国の社会を知る上で大いに参考になる)。

 マフィア問題も避けて通れない。日本の暴力団と違い、マフィアはイタリアの政治、経済システムに深く浸透し、南部では社会と不可欠の依存関係を築いている。冷戦後、東欧諸国のマフィアとネットワークがつながり、難民・売春ビジネスなどグローバルな提携が進み、欧州の安全に潜在的リスクになりつつある。

 イタリアが直面する困難さは99年の欧州単一通貨ユーロ導入を境に質的に変わった。それまで同国は不景気になると通貨リラを切り下げて輸出促進を図り切り抜けてきたが、ユーロでこの手法は効かなくなった。その結果起きているのが、他の欧州諸国への企業流出である。非効率な社会システム、硬直化した官僚制度などのハンディを抱えながら同じユーロの土俵で競争はできないからだ。

 ミラノのボッコーニ大学のジャバッチ教授は「外国人旅行者はその表面的豊かさから、イタリアを実際より25~30%増しで良く見ており、この国の本当の姿を知らない」と語る。英エコノミスト誌は同国が根本問題への取り組みを怠っていることに「緩慢なる衰退」と形容した。9日のイタリア総選挙は、表の顔の下にある実像を垣間見る機会である。(専門編集委員)

毎日新聞 2006年4月8日 東京朝刊

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